出産後に正社員を続ける人がまだ少なかった時代を駆け抜け、銀行の支店長と2児の母を両立中の 百五銀行県庁支店長・柳澤智子さん。 気弱になった時に彼女を奮い立たせたのは、上司からの温かい言葉でした。
怒濤の育児をくぐり抜け、今思うことは「人生は一度きり!」。向上心を忘れずに働き続けるモチベーションと、後に続く人々へのエールを伺いました。
1. 「男性と同じフィールドで」という覚悟
資格試験、転勤とハードな銀行業務
就職氷河期だった2000年、柳澤さんは総合職として百五銀行に新卒入社しました。
結婚・出産後も働き続け、男性と同じフィールドで活躍したいーーそんな彼女を待っていたのは、達成が容易ではない数値目標、銀行業務検定など多くの資格試験という、厳しくもやりがいのある業務でした。
出産までのキャリア
入社後は、2〜3年ごとに支店を転勤し、法人向けの外回りも経験しました。当時はまだ、法人向けに外回りをする女性銀行員が少なかった時代です。
知らない町での飛び込み営業で、精神的にも鍛えられました。
就職から10年後の2010年には、初めて部下を抱える「支店長代理」に。その後、2014年から育児休業に入りました。
2. 育休明けの不安と、「時短管理職」という選択
キャリアの転機は育休明け
順調にキャリアを積んだ充実感があった日々。大きな転機となったのが、育休明けの職場復帰でした。
「自分が休んでいる間も同期はどんどん先へ進んで行っているわけで。差が開く不安はありました。」
第2子の育休後は、支店長代理として復職。部下を抱えながらの時短勤務に挑戦しました。
便利ツール&夫との二人三脚で
子どものお迎えや急病時の対応は、夫やご両親と協力しながら乗り越えてきました。また、子育てと仕事、さらに資格勉強を両立するため、便利なツールを活用しています。
夫とはスケジュール共有アプリで、お互いの予定を把握しながら家事や育児などを分担しています。FP1級の勉強は、机に向かえなくても、通勤中に読み上げアプリを使って“耳から”学んでいます。

3. 迷いの日々、支えになった上司からの言葉
夜中2時の洗濯、歯磨きしながらの寝落ち
お子さんが幼かった頃の忙しさを、こう振り返ります。
定時に帰るために日中はドタバタ、保育園からの電話にハラハラの毎日。
「帰ると家事をして子どもを寝かせ、布団に入ると、次の瞬間にはもう朝。夜中の2時にハッと起きて洗濯機を回した事も、歯磨きしながら寝ていたこともありました。」
女性管理職先輩からの「大丈夫」
忙しかった日々の中で、柳澤さんの心の救いになったひと言があります。 それは、経営職に進み、育児も経験した女性先輩の言葉でした。
先輩「今は大変かもしれないけれど、子どもはすぐに大きくなる。そのうち何とかなるから大丈夫!」
「そのうち何とかなるんだ。大丈夫なんだ…って。」心がスーッと軽くなったことを、今でも鮮明に覚えているそうです。
「まず、やってみたら?」上司が壊した“心の天井”
時短勤務を選択した当時は、まだ制度を利用する支店長代理が少なく、実行するには勇気が必要でした。 それでも「後に続く人のためになるはず」と気持ちを切り替えることに。
さらに、時短勤務中でもキャリアを停滞させず、仕事と家庭の両立を目指すことを決意。背中を押してくれたのが、当時の男性上司からのひと言でした。
上司「未来を心配するより、もしも家庭の事情が変わったら、その時に会社と一緒に考え直したら良いのでは?まずはやってみたら。」
そのひと言を受けて、「いつの間にか自分で天井を作っていた」と気づいた柳澤さん。 迷いは吹っ切れ、「まずはやってみよう」と決意しました。
時短中リーダーの、チームをまとめる心得
管理職でありながら部下より早く帰る日々。このような働き方をしながらチームを一つにまとめる“心得”を聞いてみました。
「感謝の気持ちを毎回言葉にして伝え続けること。もう一つは、先に相手の意見を聞いたうえで、自分の考えを伝える姿勢を大切にしています。」
いつも相談しやすい雰囲気づくりを心がけている柳澤さんです。

4. 「私の時代にも欲しかった!」制度を作る側へ
育休中のモヤモヤ、育休前に解決したい
柳澤さん自身、ぼんやりとした不安を抱えながら育休の日々を過ごしていたそう。
その経験からアイデアが生まれ、導入されたのが、育休前に作成する「育休後のキャリア形成シート」です。 シートには、“復帰後に自分は会社でどんな活躍がしたいか”という理想像を記入し、会社と本人が意向を共有できるようになっています。
女性行員向け新研修「未来デザインアカデミー」
もう一つ、柳澤さんのイチオシが、2025年度から新設された「未来デザインアカデミー」です。
これは管理職候補の女性行員を対象にしたプログラム。今後のキャリア形成について考える機会を提供し、経験豊富な先輩行員がメンターとして支援やケアを実施します。
「私の時代にも欲しかった〜!そんな研修です。」
柳澤さんもメンターのひとりとして活躍しています。

5. 育児をしながら働く人へ送る言葉
自分らしく働くとは、色んな形があるはず
柳澤さんは「皆が皆バリバリ働くことが女性活躍ではない」と語ります。ご自身の経験はあくまで「私の一例に過ぎない」とした上で、こう続けました。
「怒濤の育児が一段落ついた今思うことは、“あの時頑張ってきて良かったな”ということ。」
そして、今まさに頑張っている人には、「頑張っている自分を褒めてあげてほしい」 とエールを送ります。
迷った時は、困難な道を選んでみるのも!
柳澤さんは、育児をしながらの管理職へのステップアップを選択しました。「いま仕事で会えている尊敬できる人達は、昔自分が頑張ったから出会えた」と、その選択を振り返ります。
「“人生は一度きり!迷ったら敢えて困難な道を選んでみては!” 私自身が先輩方から背中を押してもらったので、そう思います。」
いつかは転居を伴う転勤がある「Ⅰ種」への転換も検討しているという柳澤さん。 まだ見ぬご縁と景色を求めて、柳澤さんの挑戦はまだまだ続きます。


